【マッキントッシュ ロンドン】リージェンシー
英国クラシックは心に響く

2016.11.07

【マッキントッシュ ロンドン】リージェンシー
【マッキントッシュ ロンドン】リージェンシー

英国ほどマスターピースと呼べるコートをもつ国はないだろう。20世紀初頭から中ごろに誕生した多くの英国コートは、今なお現役で、世界中で愛されていることからもそれがご理解いただけるはずだ。今回ご紹介する「マッキントッシュ ロンドン」はその代表といえるだろう。しかも、同ブランドのコートは20世紀よりはるか昔の1830年に誕生したというから驚きだ。

当時、防水布といえばキャンバスの表面にオイルを塗るものしかなかったという。つまり、油が表面にあるので臭いやベトつきが強かったことが推測できる。しかも、かなりの重量になるから、外出するのもひと苦労だっただろう。そんな中、ついに画期的生地が開発される。

二枚の生地の間に溶かした天然ゴムを流し、熱で圧着することでより高い防水効果を可能にした。従来のオイルドクロスとは比較にならないほど軽く、臭いやベトつきもない。そんな夢のような生地『マッキントッシュクロス』は、1823年にチャールズ・マッキントッシュにより開発された。現在も同様の作業でこの生地は作られている。

つまりそれはほぼ手作業ということだ。熟練職人でさえ、一日に3着しか作れないというから、その手間暇は大変なものだと容易に想像できる。また、この生地でコートを作る際には、縫い目から水がしみ込まないよう、手作業で止水テープが貼られる。ポケットも縫製ではなく、職人が特殊な接着剤を指先につけ、貼り付けていく。これも200年近く前と同じ工程だ。

現在、「マッキントッシュ ロンドン」のコートよりも、もっと効果の高い防水機能をもった生地やコートはあるだろう。しかし、これほどまでに心に響く表情をもった防水の生地、そしてコートを僕は知らない。数値では計算できない、手で作られる温かみのある表情が心に響く。しかもそれが200年近くも人を魅了してきたのだ。

同ブランドにはあまたのマスターピースが存在するが、中でも僕が注目しているのは、1830年当時最先端の防水コートとして上流階級に愛された乗馬で着用された同ブランドのコートをほうふつとさせるモデル、『リージェンシー』だ。

バルカラー、ラグランスリーブ、ウエストベルトといったホースライディングに向けたディテールに往時の品と格が感じられる。それらはまた現代でも防寒性や機動性などに適した細部ともいえる。やや長めの着丈の腰をベルトでギュッと縛ると、何とも美しいAラインが完成し、着る者の背筋を自然と伸ばし、立ち居振る舞いが美しくなったように感じる。

また、乗馬用のコートを原型としているから、バイクや自転車に乗るのもいいだろう。腰ベルト、裾裏のあおり留めによって風防性を高めてくれる。

裏をめくれば止水テープとともに、ウール素材のライナーが見える。いかにも英国的な古典柄が、さらにコートに風格を加味しているようだ。そして、このライナーはもちろん取り外しができるから、春、秋、冬と長く楽しめる。しかも、このシンプルなデザインは着回しが利く。つまり、コストパフォーマンスにも優れていると言えるだろう。

 

比翼の前合わせには大きめのボタンが使われている。ベルトのバックルにもレザーが巻かれている。何が言いたいかというと、このコートは金属部品を使わない、見せないよう配慮がされている。つまり、天然素材の温かみを存分に感じられるということだ。英国クラシックはとことん心に響くのである。ということを書いていたら、無性にこの『リージェンシー』が欲しくてたまらなくなった。同ブランドのベストセラーをすでにもっているというのに。

リージェンシー
税込237,600円

※掲載商品は2016年10月現在の情報であり、変更となる場合がございます。
※品切れの際はご容赦ください。

 

お問い合わせ

北館3階 マッキントッシュ ロンドン
052-251-1111(代表)

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この記事のライター

荻山 尚 / ファッションエディター

1972年生まれ。青山学院大学卒業後、商社に入社した後に編集者に。
レオン副編集長、センス編集長などを務めた後に独立。現在はファッションエディターとして雑誌やWEB、広告などに執筆する。
雑誌GGのファッションディレクターも務める。